不貞の相手方に対する慰謝料請求

1ac0167cfd4c339289aa67f764a9a585_s

はじめに

345376cc4cc35d983550c316208535bb_s

不貞行為の相手方に対する慰謝料請求について、最高裁は次のように相手方の不法行為責任を肯定しています。

夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである(最高裁昭和51年(オ)第328号昭和54年3月30日第二小法廷判決民集33巻2号303頁)

しかし、夫婦の婚姻関係が不貞行為当時すでに破綻していた場合について最高裁は平成8年3月26日判決において次のように述べて不貞行為の相手方の不法行為責任を否定しています。

夫婦の一方と第三者が肉体関係をもった場合において、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、第三者は夫婦の他方に対して不法行為責任を負わない。けだし、夫婦の一方と第三者が肉体関係を持つことが夫婦の他方に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為と言うことができるからであって、夫婦関係がすでに破綻していた場合には、原則として、夫婦の他方にこのような権利または法的保護に値する利益があるとは言えない

eweryhyey3aeuj

夫婦の実態と因果関係

14fa098406b8fb8478eeb8455df606a2_s

要するに、不貞行為の相手方の不法行為責任が認められるためには”不貞行為があった当時に夫婦としての実体が存在していたこと”と”不貞行為によって婚姻共同生活の平和が侵害されたこと(不貞行為と損害発生との因果関係)”が必要、ということです。

不貞行為の問題では、不貞行為の時期と夫婦関係破綻の時期について争いになることが多く、加害者(不貞行為を行った者)は高い確率で「夫婦関係は既に破綻していた」と主張してきます。

ここで破綻の主張が認められてしまうと、たとえ不貞行為があったと認められた場合でも”法的保護に値する利益(婚姻共同生活の平和)があるとは言えない”として相手方の不法行為責任が否定されることになります。

とはいっても、夫婦の同居中に不貞行為があったケースなら、特別の事情が無い限り、法的保護に値する婚姻共同生活があると推定されますから、加害者が何らかの形で夫婦関係の破綻を立証しない限り、相手方の不法行為責任が認められる可能性が高いと考えられます。

関連記事

  • 慰謝料慰謝料 離婚の慰謝料 週刊誌やテレビで芸能人の離婚が話題になると、慰謝料は何千万だとか何億だとか騒がれるので、離婚には慰謝料がつきもののように思われがちですが、必ず慰謝 […]
  • 表面的な事象だけで非難すると円満解決から遠ざかる表面的な事象だけで非難すると円満解決から遠ざかる ごく普通の離婚問題では、慰謝料などの法的責任は理解しつつも、その責任を素直に受け容れられない当事者なりの言い分があったりするものです。 しかし、世の中は表面的な事象 […]
  • 慰謝料の合意はできるだけ書面に残そう慰謝料の合意はできるだけ書面に残そう 慰謝料の取り決めをする場合は、できるだけ契約書を作成しておいた方が良いでしょう。なぜなら、たとえ慰謝料が即金で支払われて問題が終結する場合でも、紛争再燃の可能性が十分にあ […]
  • 双方に責任がある場合の慰謝料双方に責任がある場合の慰謝料 慰謝料を考える場合は、まずどちらが離婚の原因を作ったかをハッキリさせるのが第一段階です。 離婚原因を作った者であっても、相手方にも責任があるなら慰謝料は請求できます […]
  • 配偶者の親族に対する慰謝料請求配偶者の親族に対する慰謝料請求 嫁と姑の対立はいつの世にも変わらない問題で、これが原因で離婚になるケースが多々あります。嫁姑に限らず、同居の親族があると、養親の婿いびりだとか、長兄夫婦と妻の不和、後妻と […]
  • 離婚慰謝料の相場離婚慰謝料の相場 離婚慰謝料の相場については確たる基準は設けられていませんが、過去の判例を紐解くと200万円程度の金額が一番多いようです。 といっても、法律で離婚慰謝料の金額が具体的 […]

コメントを残す

▼ 閉じる ▼

▲ 閉じる ▲

Return to Top ▲Return to Top ▲